咽頭癌
咽頭は場所により、上中下にわけられており、それぞれに異なる性質をもつ癌ができます。
上咽頭癌:
上咽頭というのは鼻の奥のつきあたりです。上咽頭癌は症状がでることが遅く進行した状態で発見されることがよくあります。やはり男性に多いですが、ほかの頭頚部癌に比べ、やや若い人にもできることがあります。EBウィルスが発癌に関係していると考えられていて、タバコや飲酒との関係はあまりないようです。腫れる場所により症状はさまざまですが耳管(鼻の奥と耳とをつなぐ管)を圧迫すると滲出性中耳炎となり、片側の耳の難聴や耳閉感が起こります。また、上咽頭は頭とも近い場所なので、色々な神経を圧迫して、痛みや麻痺が起きる事もあります。腫瘍が大きくなると鼻が詰まってきます。これらの原発巣の症状が出る前に、首のリンパ節が腫れて、それから上咽頭の原発巣が発見されることも比較的良くあります。上咽頭癌の発見には鼻から細いカメラを入れての撮影が必要です。
(写真) 鼻の奥に大きな塊ができて一部が崩れて白くなっています。この時点で首のリンパ節にも転移している上咽頭癌でした。
中咽頭癌:
中咽頭というのは、口を開いて覗いたときに正面、左右に見える場所です。扁桃せん、舌の付け根、軟口蓋などにできます。中高年の男性に多く、タバコ、飲酒との関連大です。喉の痛みが最初の症状になることが多いので上記の条件にあてはまり、喉の同じ場所に痛みが続くといった方は一度検査をうけることをおすすめします。この癌はリンパ節転移を起こしやすく、治療に際して放射線治療にせよ手術にせよ大きな機能障害を残しやすい場所ですので、少しでも小さいうちに発見して治療を開始することが必要です。
下咽頭癌:
下咽頭というのは喉のずっと奥で、食道につながる部分をいいます。口を開いて見える部分より下方ですので、ここを観察するためには、鏡や内視鏡(カメラ)を用います。この癌も中高年の男性に多く、タバコ、飲酒との関連大です。

(写真)下咽頭の片側が大きく腫れて喉頭が押しつぶされているので声嗄れがありました。食道の入り口は半分潰れていますが、食事は普通に出来ていました。
症状は痛みや、食事のときの異物感、詰まりなどですが、かなり大きくなるまで無症状のこともあります。また、やや観察しにくい場所なので一度の診察でははっきりと診断できず、経過観察をしているとそのうちにはっきりと見えてくるといったこともあります。下咽頭は、喉頭とつながっているので、下咽頭癌の治療のさいには、喉頭が残せるかどうかが大きな問題になります。喉頭も一緒に摘出した場合には声が出せなくなり大きな機能障害が残りますが、小さいうちであれば、喉頭を残しての治療が可能となっています。