急性中耳炎

子供さんに多い病気で、一度はかかったことがある人がかなりいるのではないかと思います。成人では頻度は低いですが、ひどい風邪をひいた時などにかかることがあります。
(写真) 右耳の急性中耳炎です。鼓膜が赤くなっていますがあまり腫れてはいません。鼓膜の奥に液体が半分程度溜まっているのがわかります。
急性中耳炎は鼻の奥と中耳をつなぐ管(耳管)を通って細菌やウィルスが中耳の中に入り起こるものです。風邪を引いて、鼻水が多いときに急に耳の痛みを訴え、熱が出るというのが典型的な経過です。その後耳だれが出だすこともあります。

(写真) 右耳の急性中耳炎です。鼓膜がドーム状に盛り上がり白くなっています。鼓膜の奥に膿が溜まって腫れている状態です。

(写真)このように鼓膜の一部が水泡(水膨れ)になることもあります。鼓膜の奥は見えなくなっています。
しかし最近では、風邪を引いた時点で、抗生剤などの内服を開始している場合もよくありますので、あまり痛みを訴えず、気が付かれないままに、中耳炎がぐずぐず長引いているというケースがかなりあります。特に小さいお子さんで、発熱が長引く、機嫌が悪い状態が続く、夜ぐずって寝ないなどの症状が続いている場合は、一度耳のチェックが必要です。
典型的な中耳炎と違って、このような中耳炎は鼓膜の所見もあまりはっきりせず、判りにくいことが多いので、顕微鏡下によく観察することが必要です。
治療は、鼓膜所見と、発熱や全身状態などを考え合わせ、必要な場合は抗生剤の内服や、鼓膜切開を行います。軽症の場合は、鎮痛剤などの対症療法だけでよいこともあります。
最近では急性中耳炎の起炎菌(原因となるばい菌)が耐性化して抗生物質が効きにくくなるケースが多くて問題となっていて、これを防ぐ為には抗生物質を乱用せず、適切な場合に適切な種類の薬を使わなければならないと考えられています。そのため、急性中耳炎の治療に関するガイドラインが考案されています。
当院でもガイドラインを参考にしながら、なるべく早く、長引かせないように、耐性菌を誘導しないように治療を行うことを目標としています。
(写真)順調な治り方をしたケースです。左は初診でこの時から抗生物質を内服し、4日目には中央の写真のように腫れはひいて、水が残っている状態になりました。この時点で抗生物質は止めて、7日目には完全に正常な状態になったことを確認しました。
症状がなくなっても、鼓膜所見が正常となったことを確認する必要があります。これを怠ると、知らない間に、鼓膜の奥に液体がたまる状態(滲出性中耳炎)に移行している可能性があり、なかなか治らなくなることがあります。ですから、通院を途中で止めることはせず必ず、もう治ったというところまで通院してください。