急性咽頭炎

咽頭は、喉の一部です。扁桃は口をあけたときに舌の奥両側に見えている部分で、これも咽頭の一部です。従って、急性咽頭炎のなかで、扁桃に主に病変のあるものを急性扁桃炎といっています。
(写真)扁桃腺が細菌感染によって、腫れて白い膿がついています。
感染によって喉に炎症が起こっている状態をいいますが、原因になっている病原体は主にウィルスと細菌で、この違いにより治療法も異なってきます。細菌であれば抗生物質を服用する必要がありますが、ウィルス性の場合は抗生物質は無効です。ウィルス性か細菌性かの見分け方には決定的なものはなく、症状や、粘膜の所見、血液検査などで判断しますが、確実とはいえません。このため、どちらかわからない例に“念のために”あるいは“二次的細菌感染を防ぐために”抗生物質を投与する場合も多かったのですが、不必要な抗生剤投与が薬剤耐性菌(抗生物質が効きにくいばい菌)を作り出すということが大きな問題となっています。

(写真)中央の口蓋垂が真っ赤になり浮腫状(水ぶくれ)に腫れています。こうなると嚥下(飲み込む動作)の度に喉の中央に強い痛みを感じます。細菌感染の可能性が高いと思われます。
また、人間の体内にはいつでも多くの細菌が活動しており(常在菌といわれています)、腸内細菌叢などをはじめとする細菌の集落をつくり、体調の維持に大切な役割を果たしています。抗生物質の投与は当然こういった細菌叢のバランスを崩しますので、場合によっては、むしろ免疫力や感染に対する抵抗力を弱める可能性があると考えられます。
以上のような理由から、風邪を含めて急性咽頭炎では、確実に細菌性と考えられるケースにだけ抗生物質を投与する方針をとっています。咽頭炎、扁桃炎を起こす細菌の中で最も頻度が多く重要なものは溶血性連鎖球菌(溶連菌)ですので、当院では溶連菌の感染を検出する迅速診断キットを用いて(5分~10分で結果が出ます。)すぐに診断して薬を処方できるようにしています。